【フォント】世界の文字を表示するためのややこしいFONTの話
フォント【font】
活字で、同一の書体・大きさの、大文字・小文字・数字・記号などの一揃い。または、コンピューターで使われる書体データのこと。
- 中国語字形
- 韓国語폰트
- タイ語แบบอักษร
- クメール語ពុម្ពអក្សរ
- ベトナム語phông chữ
参照元:weblio国語辞典、goo国語辞書、Glosbe
多言語の翻訳を扱っている弊社では、納品した翻訳テキストが「表示できない」あるいは「文字化けする」「文字が崩れて読めない」というお問合せをいただくことがあります。
正しく表示できないと言われる文字のほとんどは、タイ語、クメール語(カンボジア語)、ミャンマー語(ビルマ語)など、南インド系の声調言語の文字です。
文字がきちんと表示されないという場合は、システムにフォントが無いことや、正しいフォントや文字コードが指定されていないことが考えられます。
最近のOSには、タイ語やラオス語、ミャンマー語なども最低限のフォントはプレインストールされてはいますが、フォントの種類はOSのバージョン等によって違いがあるようなので、必要なフォントが揃っているか確認してみてください。また、書類の文字コードは世界標準のUTF-8である必要があります。
また、「各言語用のフォントがあるのに文字が崩れて表示される」いう問題の背景には、こういった文字は、未だコンピューター上で処理するための規格の統一が図れていないという実態があります。
クメール語(カンボジア語)の場合
クメール文字、タイ文字、ビルマ文字などの表音文字は、様々な発音記号や声調パターンを示す記号を組み合わせて表記すための、独自のキー配列や入力方法があります。
クメール語には、文字コードの国際標準規格であるUnicodeフォントを使う方式と、昔から使われているLimonフォントを使って入力する方式の、互換性のない2つの入力方法が存在し、混在して使われています。
この2つの方式はそれぞれキー配列も文字・記号の入力する順番も異なるため、フォントが違うと正しく表示されないという問題が発生します。
長くデファクトスタンダードとなっていたLimon方式に対し、国際規格に揃えようと国や教育機関が推奨しているのがUnicodeフォント方式です。Unicodeフォントは、DaunPenh、Khmer UI、MoolBoranなどがあります。
ミャンマー語(ビルマ語)の場合
同じ問題が、ミャンマー語にもあります。長い間世界と断絶していた経緯から、国内で独自に開発して使われてきたポピュラーなZawgyi-Oneというフォントは、正しいUnicodeフォントではなく、その他のフォントも互換性がなくバラバラな仕様でした。
状況を重く見た政府が、官公庁、教育機関、大手企業などに正規のUnicodeフォントに統一するよう指導し始めたのが2016年のことです。以前はZawgyi-Oneを使っていたミャンマー大統領府の公式ホームページ※も、現在はMyanmar 3というUnicodeフォントを使っています。その他にも、Padauk、Parabaik、MyMyanmarなど、多くのUnicodeフォントが作られています。
※現在は確認できていません。
しかし、ミャンマーでは一般の人たちの多くはまだZawgyi-Oneを使っているようなのです。ミャンマー国内のPCやスマホにはZawgyi-Oneがプレインストールされていることや、Unicodeフォントを使うためにはキーボードの配列を一から覚え直さなければならないという手間があるからです。ですので、一般のミャンマー人を対象とした翻訳テキストは、まだ偽UnicodeのZawgyi-Oneフォントを使わざるをえないというジレンマがあります。
将来的には、国際規格のUnicodeフォントに統一されていくはずで、そのための努力がされています。しかし、このような現状があるため、当分ややこしい状況が続くと思われます。その他にも、世界には互換性のないフォントや、Unicodeへの対応が不十分な言語や文字が沢山あるのです。
良質な翻訳をご提供するのが翻訳会社の本質ですが、翻訳テキストというデータを扱うためには、このようなややこしいフォントの現状も避けては通れない問題なのです。
2019.09.06