【満月】秋の季語 翻訳雑記
まん げつ【満月】
全面が輝いて円く見える月。月と太陽の黄経の差が180度になったときに起こる。十五夜の月。
- 英語full moon
- 中国語满月(簡体字); 滿月(繁体字)
- 韓国語보름달
- タイ語พระจันทร์เต็มดวง
参照元:weblio国語辞典、goo国語辞書、Glosbe
今日、9月13日は「中秋の名月」、いわゆる「十五夜」です。
しかし、関東より南は曇りがちの天気、はたして名月は見られるでしょうか。
まだまだ昼間は暑い日がありますが、「残暑(lingering summer heat)」は秋の季語です。ふと気が付くと風が肌寒く感じられる夜が来て、いつのまにか秋が深まっているものです。では、秋の季語について雑多なことを書いてみます。
中秋の名月:harvest moon
ヨーロッパでは、月にはあまり良いイメージがないようですが、秋分の日に一番近い満月をharvest moonと呼んで収穫を祝います。
十五夜:the fifteenth night (of a lunar month);a night with a full moon
「十五夜」とは、旧暦の毎月15日の夜のことで、実は毎月あります。旧暦では新月から月が初まりますので、15日あたりがだいたい満月になります。しかし、いわゆる「中秋の名月」(旧暦8月15日の月) が一番美しく見え、月見に相応しいということで、一般的に中秋の名月のことを「十五夜」と呼んでお月見をします。
中国では「中秋節(mid-autumn festival)」を祝います。横浜の中華街でもランタンが灯り、毎年様々なイベントがあり賑やかです。
月見団子:moon viewing dumplings
これは大好きです! 中国では月餅(mooncake)を食べますね。どちらも食べましょう。
いわし雲:cirrocumulus; mackerel sky
cirrocumulusは巻積雲のことで、いわし雲もその1つです。日本では台風や移動性低気圧の影響で秋に多く見られるため、これを見るとあー秋だなーと思います。こういった日本人の心情まで雲の翻訳で表すのは難しいことです。
彼岸花、曼珠沙華:red spider lily (学名:Lycoris radiata); cluster amaryllis
人気のないところで、あの紅い色を見るとドキッとすることがあります。
彼岸花の別名となっている曼珠沙華(まんじゅしゃげ)とは、「天上の花」を意味するサンスクリット語majūṣakaの音をそのまま漢字に写したものですが、仏様の頭上から降り注ぐ赤い花のことだそうです。ちなみに、蔓陀羅華 (まんだらげ:māndāravaの音写) も同じく、こちらは白い花とも色が変化するとも言われています。日本ではチョウセンアサガオの別名になっています。
紅葉(こうよう):red [yellow] leaves (of autumn); (もみじ):scarlet maple leaves
紅葉という漢字は、日本では、「こうよう」とも「もみじ」とも読みます。前後の文脈から判断して翻訳することになります。また、鹿肉のことを「もみじ」と呼んだりしますので、翻訳には気を使います。
しかも、世界的に「モミジ」と「カエデ」はほとんど区別がされません。「モミジ」をフィーチャーするのは日本独自なんでしょうか。中国でも「こうよう」は红叶ですけど、「もみじ」は枫(=カエデ)です。ですので、紅葉(こうよう)と書いて「もみじ」とも読むけど訳すとメープルになり、日本人としては、なんか、なんか違うんですよね。
蜻蛉(とんぼ):dragonfly
秋の季語である昆虫のトンボはdragonflyですが、日本では印刷の専門用語で断裁や色版合せに使うマークのことを「トンボ」と言います。英語では、register markとかtrim mark, corner markなどと言います。
それ以外でも、日本人は十字形のものを「トンボ」と呼ぶのが好きみたいで、様々な「トンボ」が存在します。部活後にグラウンドを整備したのも「トンボ」でしたし、建築・土木用語や株式の世界にも「トンボ」と呼ばれるものがあります。また、工事や物流の現場で物や動作を反転させることを「トンボ」と言ったりもします。
こういった業界用語や多様な意味を持つ言葉を翻訳するには、様々な知識とリサーチ力が必要です。実は、Webに載っている英語の例文で間違えているのを見たことがあります。
あの稀有な能力を持つ素晴らしい生物トンボは、めっきり数を減らしていますが、日本語の「トンボ」には、くれぐれもご注意ください。
2019.09.13